業界の裏側コラム

名古屋のランチ1,000円店、夜はなぜ高いのか——客単価設計の裏側

2026年6月24日 (水) 業界の裏側 編集部

名古屋・栄を歩くと、「ランチ950円〜」と「夜のコース10,000円〜」が同じ看板に並ぶ店に何度も出くわす。同じ厨房、同じ職人が昼と夜でここまで価格を変えられるのはなぜか。答えは、家賃という固定費をどう分散して回収するかという価格設計にある。

名古屋のランチ1,000円店、夜はなぜ高いのか——客単価設計の裏側
Photo: NAGOYA BITES 編集部 / Unsplash

飲食店の家賃は営業時間の長さに関係なく発生する。昼の2時間だけ営業しても、夜の5時間営業しても、月々の家賃は同じだ。ならば昼の時間帯にも売上を立てて、1時間あたりの店舗原価を薄める——これが「二毛作」と呼ばれる価格設計の発想である。昼は原価率を高めに設定してでも定食950〜1,500円前後で客数を稼ぎ、夜はコースやドリンクの利益率で回収する。ランチが安いのは赤字覚悟のサービスではなく、固定費を分散させたうえでの合理的な選択だ。

2026年6月時点、帝国データバンクの調査では食品主要195社の価格改定が1,078品目に達し、通年では5年連続で1万品目突破が見通されている。仕入原価が上がり続けるなか、店側が「どの時間帯で価格転嫁できるか」を見極める重要性は増している。ランチは他店との相場比較がされやすく値上げに慎重にならざるを得ない一方、夜のコースは体験価値を軸に単価を積み増しやすい。この非対称性が、栄・錦でよく見かける「昼は定食、夜は高級店」という同一店舗の二枚看板を生んでいる。

先週まで、この構図を逆手に取った企画も話題になった。食べ放題チェーンのニラックス系列は6月11日から24日にかけて平日限定で「夜もランチ料金で食べ放題」を展開し、通常なら客単価を積み増す夜の時間帯を、あえてランチ価格に揃えて集客を狙った。二毛作の定石が「夜で稼ぐ」だとすれば、これは逆張りの一手であり、価格設計が固定観念ではなく戦略として選ばれていることを裏付ける事例でもある。

客として読める3つのサイン

業界人の見方
  • ランチ価格が長期間据え置かれている店ほど、夜のコースやドリンクで原価を回収している可能性が高い
  • 昼夜で客層を切り替える店は、夜の予約が読みやすいぶん個室・コース中心の設計になりやすい
  • 値上げの局面では、ランチ価格より先に夜のコース単価・ドリンク単価が動く傾向がある

ランチが安いからといって「夜も割安なはず」と早合点するのは早い。価格設計を昼夜で分けている店ほど、夜は昼とは別のビジネスとして利益を作っている。栄・錦で店を選ぶ際は、昼の価格だけでなく夜のメニュー構成まで見て、店がどこで利益を作っているかを読むと、価格への納得感が変わってくる。

Inside Perspective — 業界人の目利き

  • ランチ価格が長期間据え置かれている店ほど、夜のコースやドリンクで原価を回収している可能性が高い
  • 昼夜で客層を切り替える店は、夜の予約が読みやすいぶん個室・コース中心の設計になりやすい
  • 値上げの局面では、ランチ価格より先に夜のコース単価・ドリンク単価が動く傾向がある