今日の1軒

大須に名古屋初の麻辣串、串1本50円の中華を業界人が読む

2026年8月22日 (土) 今日の1軒 編集部

大須3丁目に8月1日、麻辣串(マーラーチャン)の専門店が開いた。約50種の具材が全部串に刺さっていて、色ごとに50円から300円。取った本数がそのまま会計になる。2026年8月19日に地域メディアが報じて名古屋初と分かったこの業態を、価格の作り方・少人数で回るオペ・どのシーンで効くかの3点から業界人の目で読む。

大須に名古屋初の麻辣串、串1本50円の中華を業界人が読む
Photo: 龍さん家の大須麻辣串 / Google Maps

この記事はNAGOYA BITES — 名古屋の厳選1,100店超を業界視点で紹介するグルメガイドの一部です。

大須3丁目、上前津駅から徒歩5分の浅田屋ビル1階に龍さん家の大須麻辣串が開いたのは2026年8月1日。8月19日に地域メディアが「麻辣串(マーラーチャン)が名古屋初登場」と報じて、この業態の名前がようやく街に出た。約50種の具材がすべて串に刺さっていて、串の色によって1本50円から300円。取った本数がそのまま会計になる。

価格帯の読み方——最低消費が存在しない店

この店の価格設計で決定的なのは、コースも飲み放題もセットも無いことだ。1本50円の練り物や野菜を3本取れば150円で帰れるし、肉と海鮮を中心に15本取れば2,000円を超える。同じ店で客単価が10倍以上に開く。

色分けは値付けの都合ではなく、原価率の違う食材をひとつのオペレーションで捌くための仕組みだと読むのが業界人の見方になる。飲食店が最も嫌うのは「安い食材だけを選ばれる」ことだが、串単位で値段を変えておけば、客が何をどう選んでも粗利は崩れない。まとめて茹でて和えるので、選ばれ方が偏っても厨房の手間は変わらない。使う側から見れば、その日の予算を自分で決められる店ということになる。カップ麻辣湯を1つと串を数本で、だいたい1,000円前後に収まる。

オペの裏側——ピッキングを客に渡した

席は約15。Googleのビジネスプロフィール上の営業時間は全日11:00〜21:00で、昼に休憩を挟まない(地域メディアの取材時点では20:30までと表記されており、媒体間でぶれがある)。この席数で通し営業が成り立つのは、カップ提供=持ち歩ける形にしているからだ。

セルフで串を選ばせるということは、本来なら従業員がやる「注文を聞いて具材を取り分ける」工程を客側へ移したということでもある。厨房に残るのは茹でる・和える・盛るの3工程だけになり、少人数で回る。大須のように歩行者が多い商店街では、席の回転よりも「歩いている人を止める」ことのほうが売上に効く。11時台から開けているのは、昼のピークが来る前に食べ歩きの流れを拾うためだ。2026年8月22日時点のGoogle評価は4.4(12件)と母数はまだ少なく、評価が固まるのはこれからになる。

シーン適性——一人と買い回りに効き、接待には向かない

向いているのは、一人で軽く済ませたいとき、大須で買い物のついでに何かつまみたいとき、そして辛さの好みが違う相手と来たときだ。カップ麻辣湯は0辛から3辛まで選べるので、辛いものが苦手な同行者を切り捨てずに済む。これは大人数で入るより、2人までで使うほうが機能する構成でもある。

逆に接待やきちんとしたデートには向かない。セルフで取ってカップで受け取る形式は、相手に手間を負わせる。花椒の香りも服に残る。ここは「その日の予算を自分で決められる店」であって、相手をもてなすための箱ではない。

大須はすでに麻辣の激戦区だった

NAGOYA BITESのデータベースを引くと、店名に「麻辣」または「マーラータン」を含む名古屋市内の店は13軒あり、うち4軒が大須・上前津・矢場町に集まっている。炉鼎技 マーラータン 大須店は上前津駅12番出口すぐ、香辣麻辣湯 大須観音店は大須観音駅から280m。つまり大須は「スープの麻辣湯」の面ではとっくに飽和していた。

そこへ「串を自分で選ぶ」という別の食べ方が入ったのが今回だ。一見すると同じ麻辣の競合だが、客の使い方は違う。麻辣湯は座って食べる一食、麻辣串は歩きながらつまむ間食で、財布から出る金額の桁も、滞在時間も別物になる。同じ通りに並んでいても食い合わないのなら、大須の麻辣はもう一段増える余地がある。

Inside Perspective — 業界人の目利き

  • 串の色分け価格は、原価率の違う食材をひとつのオペで捌くための仕組み。何を選ばれても粗利が崩れない設計になっている
  • セルフで串を選ばせる=ピッキング工程を客へ移した構造。厨房は茹でる・和える・盛るの3工程で済み、約15席でも昼夜通しで回る
  • 予算を自分で決められる店。150円で帰ることも2,000円超えることもできるが、セルフ+カップ提供+花椒の香りで接待には向かない
01

龍さん家の大須麻辣串

四川料理 / 麻辣串 大須

2026年8月1日オープン。約50種の具材が全て串に刺さり、色ごとに1本50〜300円。カップ麻辣湯は0辛〜3辛。約15席、全日11:00〜21:00の通し営業。上前津駅 徒歩5分。

02

炉鼎技 マーラータン 大須店

中華 大須・上前津

上前津駅12番出口すぐ。座って食べる麻辣湯の面での近隣店。

03

香辣麻辣湯 大須観音店 マーラータン

中華 大須

大須観音駅から280m。大須の麻辣湯激戦を形づくる1軒。