今日の1軒

栄の手羽先が大阪へ —
12席カウンターと22店舗、外に出る名古屋の鶏

2026年8月30日 (日) 今日の1軒 編集部

この一週間で、名古屋の鶏が二度外へ出た。8月21日にがブリチキン。が米国2号店を開け、8月28日には手羽先むつみが9月1日の大阪・梅田出店を発表している。同じ名古屋の鶏なのに、片方は12席のカウンター、もう片方は全国22店舗のフェア。外に出る型が正反対なのが面白い。この差が名古屋で食べる側に何を意味するかを、業界人の目線で読む。

栄の手羽先が大阪へ — 12席カウンターと22店舗、外に出る名古屋の鶏
Photo: 店舗公式写真 / HotPepper

この記事はNAGOYA BITES — 名古屋の厳選1,100店超を業界視点で紹介するグルメガイドの一部です。

同じ週に、名古屋の鶏が二度外へ出た

2026年8月の最終週、名古屋の鶏に関する発表が続けて出た。ひとつは手羽先むつみで、8月28日のリリースによれば9月1日(火)に大阪市北区堂山町へ関西初出店となる梅田店を開ける。もうひとつはがブリチキン。で、8月21日(米国時間)にカリフォルニア州ハンティントン・ビーチで米国2号店を開き、さらに8月27日には9月1日から10月31日まで全国22店舗で「名古屋グルメフェア」を開くと発表した。運営は名古屋市中村区の企業だ。

同じ「名古屋の鶏」が同じ週に外へ出ているのに、出方がまるで違う。梅田の新店は12席。一方のフェアは22店舗で、うち20店舗が愛知県内という構成になっている。片方は箱を小さくして出て行き、片方は既にある箱の数で押す。この違いは企業の規模差ではなく、扱っている商品の性質の差だと考えている。

3本580円・5本890円・8本1,360円 — 本数で下がる価格帯の読み方

まず値付けから。むつみの手羽先は税込で3本580円、5本890円、8本1,360円。1本あたりに直すと193円、178円、170円と、頼む本数が増えるほど単価が下がる。飲食店の価格をコースとアラカルトで読む癖のある業界人からすると、これはコースを持たないアラカルト専業の店の典型的な設計だ。セットで縛らない代わりに、数量で単価を下げて客単価を引き上げる。

ここで効いてくるのが、手羽先が「一皿で完結しない商品」だという点である。味が濃く、手を使い、塩気が強い。必ず飲み物が並走する。当サイトのデータでも名古屋のむつみ各店の予算帯は2,001〜3,000円で、これは手羽先5本890円にドリンクを2〜3杯足すとちょうど埋まる金額だ。つまり利益の設計は手羽先本体ではなく、その横で回るドリンクにある。定番3種(黒・赤・白)に月替わりの限定を加えた4種という構成も、1人が複数種類を頼む前提になっている。3本だけ頼んで帰る客を想定した値付けにはなっていない。

12席と21席 — 揚げ置きできない商品が箱を小さくする

オペレーションで注目したいのは席数だ。梅田店は12席、名古屋の本店は2019年12月に21席のカウンターとして始まっている。全国展開を狙う業態としては、どちらもかなり小さい。

これは手羽先という商品の制約がそのまま箱のサイズに出た結果だと読んでいる。揚げ物、それも二度揚げして秘伝のタレを絡める手羽先は、作り置きが効かない。注文が入ってから揚げ、油から上げた直後に仕上げる必要があるため、客席が増えるほど提供が遅れ、遅れた分だけ商品の一番おいしい状態が失われる。席数を絞るというのは、ここでは回転を捨てて品質を取るという判断にあたる。梅田店が深夜24時まで開けるのも同じ文脈で、席数で稼げない分を営業時間の長さで取り返す設計になっている。フランチャイズで広げる際に小箱を選ぶのも、その方が味のばらつきを抑えられるからだ。この夏には一宮店と今池店が開いており、当サイトに掲載している手羽先むつみ 今池店もその1軒にあたる。

がブリチキン。側の制約はまったく違う。看板のからあげ(もも)は年間320万〜360万個が売れる規模の商品で、からあげグランプリでは15年連続の金賞を取っている。数を出すことが前提の商品なので、居酒屋業態で席数を確保し、既存の22店舗という面で一斉に動かせる。9月からのフェアで出るのは味噌串カツ、手羽先の毛沢東スパイス、名古屋めしセット、そして秋限定の洋梨ハイボールだ。

シーン適性 — カウンターの一人飲みか、席数のある宴会か

読者にとっての実利はここに集約される。同じ名古屋の鶏でも、使う場面が重ならない。

むつみは12席・21席のカウンター中心で、深夜まで開いている。向くのは一人飲みか2人までだ。カウンターで揚げたてが出てくるまでの数分を待てる人向けで、逆に人数を集めて行く店ではない。金曜の20時前後は当然埋まるので、確実に座りたいなら開店直後か、22時以降に流れが切れる時間を狙うのが現実的だと考えている。

がブリチキン。は居酒屋業態なので、逆に人数がいるときに効く。フェアが9月1日から10月31日という設定になっているのも偶然ではないだろう。この2ヶ月は飲食店にとって忘年会の下見と予約が動き出す時期にあたる。名古屋めしを並べて新規客に一度試させ、そのまま年末の宴会に繋げる——業界の年間サイクルから見れば、フェアの時期設定はそう読むのが自然だ。

名古屋の外に出ていく店が増えるのは、地元にとって悪い話ではない。ただ、梅田や恵比寿で同じ看板を見かけたときに「名古屋で食べたときの方がよかった」と言えるかどうかは、結局こちらが本店なり地元店なりを知っているかどうかで決まる。名古屋の手羽先で1本ずつ食べ比べておくなら、外に出ていく今がちょうどいい時期だと思う。

Inside Perspective — 業界人の目利き

  • 手羽先3本580円/5本890円/8本1,360円は1本あたり193円→178円→170円の逓減設計。コースを持たないアラカルト専業で、利益は手羽先本体ではなく並走するドリンクにある。予算2,001〜3,000円は5本+ドリンク2〜3杯でちょうど埋まる
  • 梅田12席・名古屋本店21席という小箱は、揚げ置きできない手羽先の制約がそのまま出た結果。席数を絞る=回転を捨てて品質を取る判断で、足りない分を深夜24時までの営業時間で取り返している
  • むつみのカウンターは一人飲みか2人まで、がブリチキン。は席数のある居酒屋で大人数向き。フェアが9〜10月なのは、忘年会の下見と予約が動き出す時期に新規客を試させる狙いと読める
01

手羽先むつみ 本店

和食 / 手羽先 ★4.7

2019年12月に21席のカウンターで創業した手羽先専門店の本店。定番3種(黒・赤・白)に月替わりの限定を加えた4種構成で、手羽先は3本580円・5本890円・8本1,360円(税込)。予算帯は2,001〜3,000円。9月1日に関西初出店となる梅田店を開ける。

02

手羽先むつみ 今池店

和食 / 手羽先 今池 ★5.0

この夏に開いたむつみの新店の1軒。今池駅7番出口から徒歩約1分で、地下鉄東山線・桜通線の乗り換え動線上にある。栄まで出ずに同じ手羽先を試せる。

03

がブリチキン。 錦通店

居酒屋 / からあげ ★4.7

からあげグランプリ15年連続金賞の看板を持つ名古屋発祥の居酒屋。栄駅8番出口から徒歩3分。9月1日から10月31日の「名古屋グルメフェア」対象店で、味噌串カツや手羽先 毛沢東スパイスが並ぶ。

04

がブリチキン 金山本店

居酒屋 / からあげ 金山 ★4.7

金山駅南口から徒歩20秒。乗り換え客を拾える立地で、人数がまとまったときに使いやすい。こちらもフェア対象エリアに入る。