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丸の内の喫茶「升半茶店」——抹茶2.6倍でもスイーツ2200円の理由

2026年9月27日 (日) 今日の1軒 編集部

抹茶の原料であるてん茶の平均出荷価格は、2026年産で前年比2.6倍の1kg8,562円をつけた。原料が2.6倍になった年に、丸の内の升半茶店 本店は抹茶スイーツ5種のプレートを2,200円で出している。2023年の公開価格は1,980円。上げ幅は11%で止まっている。この差は企業努力という言葉では説明できない。天保11年創業の茶問屋が、20席の喫茶で何を値段に乗せ、何を乗せていないのかを読む。

丸の内の喫茶「升半茶店」——抹茶2.6倍でもスイーツ2200円の理由
Photo: 升半茶店 本店(ホットペッパーグルメ掲載の店舗写真) / HotPepper

この記事はNAGOYA BITES — 名古屋の厳選1,100店超を業界視点で紹介するグルメガイドの一部です。

2026年9月5日配信の報道によれば、抹茶の原料であるてん茶の平均出荷価格は前年比2.6倍、1kgあたり8,562円をつけた。5年連続の上昇である。煎茶よりてん茶のほうが実入りがいいため転作が進み、今度は煎茶の生産量が激減した。急須で茶を入れる行為が「ぜいたく」になりかけている——それが2026年秋の日本茶の現在地だ。

増産は進んでいる。碾茶の生産量は10年前の2.7倍で、主産地では大型工場の新設が相次ぐ。それでも足りない。茶畑を広げてから摘めるまでに5年以上かかり、臼挽きに使う石臼の職人が足りず製造機器の待機が2〜3年に及ぶからだ。金を積めば翌月に増える種類の原料ではない。

その渦中で、地下鉄丸の内駅から徒歩2分、栄・錦エリアの升半茶店 本店は天保11年(1840年)創業、京都の宇治抹茶を名古屋に届けて186年になる日本茶専門店だ。2023年に本店を改装し、20席の喫茶を併設した。看板のよくばりスイーツプレート(抹茶付き)は2,200円、抹茶スイーツ5種に抹茶が一服つく。

読みどころはここだ。同じプレートは2023年7月時点の公開情報では1,980円だった。3年で+11.1%。ロールケーキは660円から770円で+16.7%。原料が2.6倍になった年に、店頭価格は1割強しか動いていない。企業努力という言葉で片づく幅ではない。

答えはメニューの価格帯の組み方に出ている。単品は抹茶プリン770円、抹茶あんみつ990円、抹茶ぜんざい990円と770〜990円に集まり、その多くが抹茶を生地やあんに練り込む加工品だ。加工品は一食あたりの抹茶使用量が小さく、原料が2.6倍になっても原価の効き方は穏やかになる。逆に原料高が最も直撃するのは、抹茶をそのまま一服点てて出す茶である。2,200円のプレートが「加工品5種+点て出し一服」という構成なのは、値上がりの直撃を受ける部分を一杯に封じ込めた形と読める。アラカルトで積むかプレートで頼むかの分岐点も、そこにある。

オペレーションの設計も喫茶店のそれではない。営業は月〜土の10:30〜17:30(料理L.O.17:00)、定休は日曜と祝日。カフェ専業なら日祝こそ書き入れ時だが、この店はそこを閉める。本業が茶葉の小売と卸で、喫茶は売り場の滞留時間を作る装置だからだ。抹茶ソフトクリーム648円がテイクアウト限定なのも同じ筋で、席を使わない客数と席を使う客数を最初から分けてある。20席しかない店が繁忙な時間帯の回転を守るには、これがいちばん確実な手になる。予約は受けていないので、土曜の午後は待ちを見込んでおきたい。

升半茶店 本店(丸の内・錦)の店舗写真
Photo: 升半茶店 本店 / Google Maps

向くシーンははっきりしている。平日の午後、一人か二人。茶葉を選びに来たついで、買い物のついでに座る使い方だ。17:30に閉まるので夜の接待やデートには使えない。逆に、静かな場所で短い打ち合わせをしたい昼下がりには、名古屋でも数少ない選択肢になる。そして今日は日曜、この店は閉まっている。行くなら月曜から土曜、できれば平日に。

抹茶が世界の飲み物になった代償として、日本茶は日常から遠ざかりつつある。産地から離れた消費地の老舗が、原料高をどこで受け止め、どこで受け止めないか。その判断は、メニュー表の数字という誰にでも確かめられる形で出ている。2,200円は高いのではなく、まだ止まっている。

Inside Perspective — 業界人の目利き

  • 加工品中心のラインに寄せることで、原料高の直撃を「点て出し一服」に封じ込めている。抹茶スイーツの値段は、抹茶そのものの値段ほどには動かない。
  • テイクアウト限定のソフトクリームは、席を使わない客数を別建てで取る設計。20席の店が繁忙時間帯の回転を守るための常套手段。
  • 日祝定休は「休めるから休む」ではなく「本業が茶の販売だから」。喫茶が主目的の店とは、値付けも営業時間も別の論理で動いている。
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升半茶店 本店

カフェ・スイーツ(日本茶専門店) 丸の内・錦 ★4.1

天保11年(1840年)創業の日本茶専門店。2023年の本店改装で約20席の喫茶を併設した。よくばりスイーツプレート(抹茶付き)2,200円、抹茶プリン770円、抹茶ソフトクリーム648円はテイクアウト限定。月〜土 10:30〜17:30(L.O.17:00)、日祝定休。丸の内駅2分/伏見駅4分。