今日の1軒

同じ看板で経営が5つ、大須の矢場味仙で台湾ラーメンを一人飲みするなら知っておく話

2026年8月25日 (火) 今日の1軒 編集部

名古屋で「味仙に行く」と言うとき、実は5つの別会社から1社を選んでいる。今池・八事・矢場・藤が丘・日進竹の山は兄弟姉妹がそれぞれ独立して開いた別経営で、味も価格も閉店時間も違う。2026年8月24日に創業の地で復活した下坪店を入口に、矢場味仙という1社の設計を業界人の目で分解する。

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この記事はNAGOYA BITES — 名古屋の厳選1,100店超を業界視点で紹介するグルメガイドの一部です。

2026年8月24日、名古屋市千種区京命に「矢場味仙 下坪店」が開いた。ここは公式の社史がはっきり「創業の地」と書いている場所で、1981年に長女がこの下坪の地で店を開いたのが、いまの矢場味仙の出発点にあたる。1999年に矢場町の現在地へ移ったあとも下坪の店は残っていたが、人員不足で長期休業に入り、地元では事実上の閉店とみられていた。それが屋号を「矢場味仙」に揃えて戻ってきた、というのが今回のニュースだ。

注目したいのは、公式Instagramが8月19日に出した再開の告知に、営業時間や記念の杏仁豆腐と並んでスタッフ募集が同居していたことだ。人手が足りずに止まった店の再開告知に求人が併記されている。これは景気のいい話というより、休業の原因がまだ完全には解けていないことの率直な表示だと業界人は読む。人員不足で長期休業に入った飲食店は、そのまま看板を下ろすのが普通だ。戻ってこられる店には、人を回せる母体がある。

「味仙」は1つのチェーンではない

ここで前提を1つ揃えておきたい。味仙は1945年に笹島で開いた中華料理店をルーツに、5人の兄弟姉妹がそれぞれ別経営で5系統に分かれている。1962年の今池本店(長男)、1973年の八事(次男)、1981年の矢場味仙(長女)、1982年の藤が丘(次女)、1987年の日進竹の山(三男)。同じ「味仙」の暖簾でも会社が違うので、辛さの出し方も、価格も、閉店時間も揃っていない。矢場味仙の辛さは恵那のあじめこしょうによるものだと公式サイトが明記している。

つまり消費者が「味仙で台湾ラーメン」と言うとき、実際にやっているのは5社から1社を選ぶ行為だ。どれが正解かではなく、その日の使い方に合う系統はどれかという選び方になる。

価格帯は「何を頼むか」ではなく「何品で止めるか」

栄と大須の間にある矢場味仙は、夜の予算帯が2,001〜3,000円で掲載されている。ただしこれは、台湾ラーメン1杯で帰る人の数字ではない。ラーメンだけなら1,000円台で収まるところに、青菜炒めや一品を1つ挟み、ビールを足すと一気に2,000円台後半へ動く。コース主体の店と違って上限を店側が決めてくれないので、会計は品数で決まる。予算を読みたいなら、メニューの値段より「何品で止めるか」を先に決めておくほうが早い。

深夜1時まで開いている店の使い方

オペレーション面で効いているのは営業時間だ。矢場味仙は夜が翌1時まで(ラストオーダー翌0時半)で、矢場町駅4番出口から徒歩7分、栄からも大須からも歩ける位置にある。この2つが重なると、店の性格は自動的に決まる。一次会が終わった客を受ける〆の店だ。混み合うのは22時以降で、その時間帯は席の入れ替わり前提で回っている。ゆっくり長居する設計ではないので、予約で押さえるより、入れ替わりの波に合わせて入るほうが実際は早い。

向くシーン、向かないシーン

結論から言えば、この店は一人飲みと二次会に強く、接待には向かない。一人飲みに強いのは、ラーメン1杯で完結できて滞在時間を自分で決められるからで、深夜まで開いていることがそのまま逃げ道になる。逆に接待で使いにくいのは、辛さの許容度が人によって大きく割れること、そして回転を前提にした音量と席の詰まり方が、話を通す場に向かないからだ。相手の好みを知らないまま連れて行く店ではない。

Google評価は3.8、口コミは5,801件。件数の多い老舗で星が3点台後半に落ち着くのは、辛さという好みが割れる軸を看板に据えている店ではむしろ自然な着地だ。低評価店の数字ではなく、刺さる人には強く刺さる店の数字として読みたい。

一人でカウンターに座る店をもう少し探すなら名古屋の一人飲み特集を、大須から歩いて回るなら大須の食べ歩き特集も併せてどうぞ。

Inside Perspective — 業界人の目利き

  • 「味仙」は5兄弟姉妹による5系統の別経営。同じ暖簾でも辛さ・価格・閉店時間が揃っていないので、消費者は実質5社から1社を選んでいる
  • 夜の予算帯2,001〜3,000円はコースの値段ではなく品数の結果。上限を店が決めない造りなので、入る前に「何品で止めるか」を決めておくと読み違えない
  • 翌1時まで(LO翌0時半)×栄と大須の中間という条件は〆の店の設計。混むのは22時以降で入れ替わり前提のため、一人飲みと二次会に強く接待には向かない
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台湾料理 矢場味仙

中華 栄(ミナミ)/矢場町/大須/上前津 ★3.8

矢場町駅4番出口から徒歩7分、栄と大須の中間。夜は翌1時まで(LO翌0時半)。夜の予算帯2,001〜3,000円。5系統ある味仙のうち1981年に長女が創業した系統で、辛さの源は恵那のあじめこしょう。